アイリーア®による治療法
未熟児網膜症での異常な血管の増殖の原因にはVEGFが関わっています。アイリーア®はVEGFのはたらきを抑える作用を持つ、抗VEGF薬といわれるお薬のひとつです。アイリーア®を目の中に注射することで、異常な血管の増殖を抑えます。
未熟児網膜症においては、血管のない領域の虚血部位から多くのVEGFが放出され、異常な血管の増殖が起こります。
アイリーア®の注射方法
アイリーア®は、点眼などで消毒(しょうどく)・麻酔(ますい)した後、白目の部分から眼の中心の硝子体に向けて注射します※。麻酔が効いている状態では、痛みはほとんどありません。
※硝子体内注射
眼内に直接お薬を注射することで全身的な副作用のリスクを軽減し、眼内の病変に対してより強く治療効果を引き出すことを目的としています。
治療のスケジュール
アイリーア®は病院で目に注射してもらうお薬です。アイリーア®を目の中に1回注射します。
病状に応じて、担当医の判断によって再び注射※が行われます。
※注射の間隔は1ヵ月以上あけて行われます。
アイリーア®による治療前の注意
アイリーア®は医師が目に注射するお薬です。注射に際し、消毒薬(しょうどくやく)、麻酔薬(ますいやく)、抗菌薬(こうきんやく)などを使います。
アイリーア®による治療のながれ
副作用について
日本を含む世界各国で実施された未熟児網膜症の患者さんを対象とした臨床試験(りんしょうしけん)では、患者さん79例中17例(21.5%)に副作用(投与手技[とうよしゅぎ]に関連するものを含む)が認められました。主な副作用は、結膜出血(けつまくしゅっけつ)4例(5.1%)、網膜出血(もうまくしゅっけつ)3例(3.8%)、注射部位出血(ちゅうしゃぶいしゅっけつ)3例(3.8%)、眼圧上昇(がんあつじょうしょう)3例(3.8%)でした。
薬剤を目に注射するときやその後に、細菌などが目に入ることがあります。そのような場合、強い炎症(眼内炎[がんないえん])が起こることで視力障害の原因となることがあります。
他の適応疾患で成人に対して行われた国内外の臨床試験では、脳卒中(のうそっちゅう)が報告されています。
上記の眼内炎、脳卒中のほかに、眼圧上昇、硝子体はく離(しょうしたいはくり)、外傷性白内障(がいしょうせいはくないしょう)、網膜出血、網膜色素上皮裂孔(もうまくしきそじょうひれっこう)、硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)、網膜はく離、網膜裂孔(もうまくれっこう)、網膜色素上皮はく離(もうまくしきそじょうひはくり)があらわれることがあります。
アイリーア®による治療後、お子さんの目やからだに何か異変を感じた場合は(いつもと違うと感じたら)、すぐに担当医にご連絡ください。
長期的な影響と定期的検査
アイリーア®の注射により症状が改善したあとも、網膜症が進行する可能性があります。そのため、定期的な検査が必要です。注射後16週までは、週1回の眼底検査が推奨されています。網膜血管が眼底周辺部まで正常に発達していない場合には、注射後1年間は細かく定期的な眼底検査を続けることが望ましいとされています。検査の頻度は、未熟児網膜症のタイプや重症度、お子さんの全身状態、施設での管理方法を考慮して決定されます1)。
1) 未熟児網膜症眼科管理対策委員会:未熟児網膜症に対する抗VEGF療法の手引き, 2020