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国内外におけるアイリーアの投与間隔延長のエビデンス

DME患者さんの約72%は日常活動のさまざまな面で困難を報告しており、特に読書(57.0%)と運転(38.8%)での不便さを訴えていました

DMEによる日常活動に対する影響(海外データ)

グラフ:DMEによる日常活動に対する影響(海外データ)

DME患者さんの51.0%は事前に十分に計画された診療予約を、49.5%は診察と治療を同日に行う、より長い間隔での来院を好んでいました

DME患者さんの診療経験、診療に対する希望、治療医に対する期待など(海外データ)

表:DME患者さんの診療経験、診療に対する希望、治療医に対する期待など(海外データ)

対象:
2017年1月16日から5月31日に、フランスの複数の眼科施設において抗VEGF薬またはステロイドの硝子体内投与を受けているDME患者116例

方法:
20例を対象とした予備的な定性調査を実施後、116例を対象に書面アンケートおよび電話インタビューによる定量調査を実施した。DME患者における疾患および治療の経験、日常生活活動における制限、治療医との関わり、疾患への恐れなどの探索を目的として実施した。

利益相反:
著者らに、Bayerよりコンサルタント料を受領していた者が含まれる。

Fajnkuchen F, et al.: Acta Diabetol. 2020; 57(9): 1081-1091.


多施設共同前向き網膜光凝固併用T&E投与試験

Hirano T, et al.: Sci Rep. 2021; 11: 4488.

試験概要

目的

DMEを有する患者を対象に、レーザー光凝固を併用し、アイリーア硝子体内投与の間隔を最長16週としたTreat and Extend(T&E)投与による2年間の有効性および安全性を評価する。

試験対象

中心窩に及ぶDMEを有する患者40例40眼(2015年4月1日~2017年2月28日に信州大学、福井大学、三重大学、旭川医科大学、筑波大学、北海道大学、九州大学および滋賀医科大学の国内8施設より登録)

[主な選択基準]

  • 試験眼にSD-OCTでCST300μm以上の中心窩に及ぶDMEを有する
  • ETDRS視力表による最高矯正視力文字数が24文字以上 など
試験デザイン

医師主導多施設共同前向き非無作為化オープンラベル単群臨床試験

投与方法

導入期では、アイリーア(アフリベルセプトとして2mg)の初回投与後、16週まで5回連続毎月投与した。
再投与基準のいずれにも該当しない場合は、疾患が安定していると判断し、T&E期に移行した。
なお、初回投与1週後にベースラインのFA所見に応じてショートパルス局所/格子状レーザー光凝固が実施された。その後のレーザー光凝固は前回の実施から4週以上おいて実施された。

主要評価項目

2年目における最高矯正視力文字数およびCSTのベースラインからの変化量

副次評価項目

2年目までの平均投与回数、投与間隔分布、眼および全身性の有害事象

解析計画

<探索的な解析>

主要評価項目(FAS、PPS):投与後の変化は4週ごとに集計し、各時点のベースラインからの変化量は反復測定分散分析およびDunnett法を用いた多重比較により評価した。なお、欠測値はLOCF法で補完した。
なお、本試験は単群試験であることから既報との比較検討を目的として、有効性の主要評価項目については、VIVID/VISTA試験1、2)の視力基準に合致した患者における層別解析を行った。

利益相反

本研究はバイエル薬品の支援により行われた。著者にバイエル薬品、参天製薬より研究費、講演料、謝礼などを受領している者が含まれる。

1)Brown DM, et al.: Ophthalmology. 2015; 122: 2044‒2052.
2)Heier JS, et al.: Ophthalmology. 2016; 123: 2376‒2385.

SD:spectral domain
ETDRS:early treatment diabetic retinopathy study
CST(central subfield macular thickness):中心サブフィールド黄斑厚
FAS(full analysis set):最大の解析対象集団。試験中で少なくとも1回アイリーア硝子体内投与を施行した集団
PPS(per protocol set):治験実施計画書に適合した対象集団。2年間の追跡を完遂し、試験プロトコールを遵守した集団
LOCF(last observation carried forward):最終評価スコア外挿法

投与スケジュール

導入期およびT&E期のフローチャート

図:導入期およびT&E期のフローチャート

Hirano T, et al.: Jpn J Ophthalmol. 2021; 65: 354. Supplemental Figure 1

<主要評価項目>
2年目終了時点の最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量は、+5.0文字(FAS)、+6.1文字(PPS)でした

最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量

グラフ:最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量

Hirano T, et al.: Sci Rep. 2021; 11: 4488. https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

<主要評価項目>
2年目終了時点のCSTのベースラインからの変化量は、-164.1μm(FAS)、-184.1μm(PPS)でした

CSTのベースラインからの変化量

グラフ:CSTのベースラインからの変化量

Hirano T, et al.: Sci Rep. 2021; 11: 4488. https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

<副次評価項目>
2年目終了時点での投与間隔の割合は、8週が26.7%、12週が6.7%、16週が66.7%でした

投与間隔分布

(n=30、PPS)

グラフ:投与間隔分布

Hirano T, et al.: Sci Rep. 2021; 11: 4488. https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

投与回数<副次評価項目>

(n=30、PPS)

表:投与回数<副次評価項目>

平均(SD)

Hirano T, et al.: Sci Rep. 2021; 11: 4488. https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

<副次評価項目>
眼の有害事象は眼痛2例(5%)、白内障進行2例(5%)、眼そう痒感1例(2.5%)、結膜出血1例(2.5%)、眼圧上昇1例(2.5%)、流涙1例(2.5%)、眼瞼炎1例(2.5%)でした

眼および全身性の有害事象<副次評価項目>

(n=40、SAF)

眼の有害事象
眼痛2例(5%)、白内障進行2例(5%)、眼そう痒感1例(2.5%)、結膜出血1例(2.5%)、眼圧上昇1例(2.5%)、流涙1例(2.5%)、眼瞼炎1例(2.5%)

眼の重篤な有害事象
網膜中心静脈閉塞症1例(2.5%)

全身性の重篤な有害事象
肺炎1例(2.5%)、下肢蜂窩織炎1例(2.5%)、脳梗塞1例(2.5%)

その他の有害事象については論文中に記載されていなかった

SAF(safety analysis set):安全性解析対象集団

Hirano T, et al.: Sci Rep. 2021; 11: 4488.


Sheu SJ, et al.: J Chin Med Assoc. 2022(海外データ)

Sheu SJ, et al.: J Chin Med Assoc. 2022; 85: 246-251.

試験概要

目的

中心窩に及ぶDMEを有する患者を対象に、アイリーアを用いたT&Eレジメンによる有効性および安全性を評価する。

試験対象

中心窩に及ぶDMEを有する患者45例45眼(2015年8月~2017年11月に台湾5施設より登録)

[主な選択基準]

  • 20歳以上で1型あるいは2型糖尿病を有する
  • OCTで300μm超の中心窩に及ぶDMEを有する
  • ETDRS視力表による最高矯正視力文字数が73~24文字 など
試験デザイン

52週、多施設共同、前向き、オープンラベル、単群、第Ⅲb相試験

投与方法

導入期としてアイリーア(アフリベルセプトとして2mg)を5回毎月投与後、疾患安定性に基づき、投与間隔を4週幅で延長/短縮するT&E投与(最長投与間隔12週)を行った。
再投与基準に従い、次回投与間隔は以下のいずれかとした。

  • 前回来院時から視力低下が5文字未満、またはCRTが300μm未満の場合、投与間隔を4週幅で延長
  • 前回来院時から視力低下が5文字以上、かつ、CRTが300μm以上の場合、投与間隔を4週幅で短縮
主要評価項目

<主要評価項目>
52週時における最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量

<副次評価項目>
52週時におけるCRTのベースラインからの変化量、52週時における15文字以上の視力改善を達成した患者の割合、52週時におけるDRSSスコアが2段階以上改善した患者の割合 など

<その他の評価項目>
疾患安定に達しT&Eにより20週時の投与が延長された患者の割合、52週時における最大投与間隔(12週)を達成した患者の割合、投与回数 など

<安全性評価項目>
すべての有害事象、重篤な有害事象 など

解析計画
  • 欠測データはLOCF法にて補完した。
  • 最高矯正視力文字数およびCRTの52週時におけるベースラインからの変化量は対応のあるt検定を用いて評価した。
利益相反

本研究はBayerの資金によって実施された。著者にBayerよりコンサルタント料などを受領している者が含まれる。

CRT(central retinal thickness):中心網膜厚
DRSS(diabetic retinopathy severity scale):糖尿病網膜症重症度スコア

<主要評価項目>
52週時の最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量は+8.3文字でした

最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量

グラフ:最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量

Sheu SJ, et al.: J Chin Med Assoc. 2022; 85: 246-251.

<副次評価項目>
52週時のCRTのベースラインからの変化量は-138.2μmでした

CRTのベースラインからの変化量

グラフ:CRTのベースラインからの変化量

Sheu SJ, et al.: J Chin Med Assoc. 2022; 85: 246-251.

52週時の投与回数<その他の評価項目>

表:52週時の投与回数<その他の評価項目>

Sheu SJ, et al.: J Chin Med Assoc. 2022; 85: 246-251.)

<その他の評価項目>
疾患安定に達しT&Eにより20週時の投与が延長された患者の割合は87%でした

疾患安定に達しT&Eにより20週時の投与が延長された患者の割合

グラフ:疾患安定に達しT&Eにより20週時の投与が延長された患者の割合

Sheu SJ, et al.: J Chin Med Assoc. 2022; 85: 246-251.より作図

<その他の評価項目>
52週時における最大投与間隔(12週)を達成した患者の割合は89%でした

52週時における投与間隔別患者の割合

グラフ:52週時における投与間隔別患者の割合

Sheu SJ, et al.: J Chin Med Assoc. 2022; 85: 246-251.より作図

<安全性評価項目>
有害事象は22例(49%)に認められました

有害事象

(SAF)

表:有害事象

発現例数(発現率%)

a:脳血管発作  b:僚眼における高眼圧症

眼以外の重篤な有害事象の事象名については論文から特定できなかった

Sheu SJ, et al.: J Chin Med Assoc. 2022; 85: 246-251.


まとめ

患者さんの視力改善ニーズ(海外データ)1)

DME患者さんは、日常活動のさまざまな面で困難を報告しており、特に読書(57.0%)と運転(38.8%)での不便さを訴えていました。また、DME患者さんの51.0%は事前に十分に計画された診療予約を、49.5%は診察と治療を同日に行う、より長い間隔での来院を好んでいました。

アフリベルセプトは、DMEにおいて複数の国内外の試験でQ12およびQ16といった投与間隔の延長について報告されています

多施設共同前向き網膜光凝固併用T&E投与試験(日本)2)

アフリベルセプトの網膜光凝固併用T&E投与試験において、主要評価項目である2年目終了時点の最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量は、+5.0文字(FAS)、+6.1文字(PPS)でした。

2年目終了時点で投与間隔を12週以上に延長できた患者の割合は73.3%、16週まで延長できた患者の割合は66.7%であり、8週であった患者の割合は26.7%でした。

眼の有害事象は眼痛2例(5%)、白内障進行2例(5%)、眼そう痒感1例(2.5%)、結膜出血1例(2.5%)、眼圧上昇1例(2.5%)、流涙1例(2.5%)、眼瞼炎1例(2.5%)でした。

Sheu SJ, et al.: J Chin Med Assoc. 2022(海外データ、台湾)3)

アフリベルセプトのT&E試験において、主要評価項目である52週時の最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量は+8.3文字でした。

疾患安定に達しT&Eにより20週時の投与が延長された患者の割合は87%でした。また、52週時における最大投与間隔(12週)を達成した患者の割合は89%でした。

有害事象は22例(49%)に認められました。

1)
Fajnkuchen F, et al.: Acta Diabetol. 2020; 57(9): 1081-1091.
2)
Hirano T, et al.: Sci Rep. 2021; 11: 4488.
3)
Sheu SJ, et al.: J Chin Med Assoc. 2022; 85: 246-251.