アフリベルセプトの構造と作用機序
アフリベルセプトの構造
アフリベルセプトは、VEGFR-1およびVEGFR-2の細胞外ドメインとヒトIgG1のFcドメインからなる、遺伝子組換え融合糖蛋白質です。アフリベルセプトは、新たな結合メカニズムを有し、VEGF-A、PlGFおよびVEGF-Bと1:1で結合します。
1)Dixon JA, et al.: Expert Opin Investig Drugs 2009; 18: 1573-1580.
利益相反:本論文の著者にRegeneronの治験担当医師が含まれる
監修:北海道大学 大学院医学研究科 眼科学分野 教授 石田 晋 先生
アフリベルセプトの作用機序
アフリベルセプトは、VEGF-A、PlGFおよびVEGF-Bと結合することで、VEGF受容体を介した血管新生や血管透過性亢進、炎症反応を抑制すると考えられます。
監修:北海道大学 大学院医学研究科 眼科学分野 教授 石田 晋 先生
VEGF(vascular endothelial growth factor):血管内皮増殖因子
PlGF(placental growth factor):胎盤成長因子
VEGFR-1(vascular endothelial growth factor receptor-1):VEGF受容体-1
VEGFR-2(vascular endothelial growth factor receptor-2):VEGF受容体-2
RPE(retinal pigment epithelium):網膜色素上皮
参考:眼内の炎症・血管新生・浮腫とVEGF
滲出型加齢黄斑変性(AMD)でみられる脈絡膜新生血管の形成にはVEGF-Aが深く関与しています。また、VEGF-Aは滲出型AMD、網膜静脈閉塞症(RVO)、病的近視における脈絡膜新生血管(mCNV)および糖尿病黄斑浮腫(DME)における血管透過性亢進(網膜浮腫)や血管新生緑内障(NVG)における虹彩・隅角新生血管の形成にも深く関与しています。さらに、VEGF-Aは炎症細胞の動員や血管内皮への接着を促進する炎症性サイトカインとしての機能も併せ持っています。
炎症・血管新生・浮腫に対するPlGFおよびVEGF-Bの関与
- PlGFは、VEGFR-1に結合し、モノサイト/マクロファージ系白血球の走化因子として働く1)
- PlGFは、脈絡膜新生血管の形成に関与する2)
- PlGFは、虹彩新生血管の形成に関与している可能性がある3)
- PlGF、VEGF-B、およびそれらの受容体は、ヒト脈絡膜新生血管に発現している4)
- PlGFは、RPEに作用しtight junctionを破たんさせバリア機能を低下させる可能性がある5)
- 網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫を有する患者では眼内PlGF濃度が上昇しており、PlGFは黄斑浮腫の進展に関与している可能性がある6,7)
- 糖尿病黄斑浮腫の患者の眼内PlGF濃度は増加している8)
- VEGF-Bは、正常発生における血管成長には必須でないが、病理的新生血管の生存に重要であり、眼内血管新生の治療ターゲットになりうる9)
1)Clauss M, et al.: J Biol Chem 1996; 271: 17629-17634.
2)Rakic JM, et al.: Invest Ophthalmol Vis Sci 2003; 44: 3186-3193.
3)Boyd SR, et al.: Arch Ophthalmol 2002; 120: 1644-1650.
4)Otani A, et al.: Microvasc Res 2002; 64: 162-169.
利益相反:本論文の著者にBayerより謝礼および研究費を受領した者が含まれる。
5)Miyamoto N, et al.: Ophthalmic Res 2008; 40: 203-207.
利益相反:本論文の著者にBayerより謝礼を受領した者が含まれる。
6)Noma H, et al.: Invest Ophthalmol Vis Sci 2014; 55: 3878-3885.
利益相反:本論文の著者にBayerより謝礼および研究費を受領した者が含まれる。
7)Noma H, et al.: Invest Ophthalmol Vis Sci 2015; 56: 1122-1128.
利益相反:本論文の著者にBayerより謝礼および研究費を受領した者が含まれる。
8)Ando R, et al.: Acta Ophthalmol 2014; 92: e245- e246.
利益相反:本論文の著者にBayerより謝礼および研究費を受領した者が含まれる。
9)Zhang F, et al.: Proc Natl Acad Sci USA 2009; 106: 6152-6157.