第Ⅲ相試験:COPERNICUS試験(海外データ)1)
(偽注射に対する優越性の検証)
1)バイエル薬品社内資料[海外第Ⅲ相試験:COPERNICUS試験(外国人)]承認時評価資料
本ページでは「アイリーア(2mg)」を「アイリーア」と記載しています。
滲出型加齢黄斑変性(AMD)患者を対象とした海外第Ⅱ相試験(CLEAR-IT Ⅱ試験)および国内外で実施された第Ⅲ相試験(VIEW1試験およびVIEW2試験)の結果から、アイリーアの用法及び用量を「2mgを4週ごとに硝子体内投与する」と設定し、アイリーアの偽注射に対する優越性を検証しました。
【実施地域】
米国、カナダ、インド、イスラエルおよびコロンビアの5ヵ国、55施設
試験概要
目的
網膜中心静脈閉塞症(CRVO)に伴う黄斑浮腫を有する患者を対象に、アイリーアの有効性について偽注射に対する優越性を検証するとともに、安全性および忍容性についても検討する
試験対象
CRVOに伴う黄斑浮腫を有する患者:189例
[主な選択基準]
- CRVO(罹病期間9ヵ月未満)に伴う黄斑浮腫を有する18歳以上の男女
- OCTで中心網膜厚(CRT)が250µm以上
- 試験眼のETDRS視力表による最高矯正視力文字数が73~24文字(スネレン視力で20/40~20/320) など
[主な除外基準]
- 試験眼にVEGF阻害剤または副腎皮質ステロイド剤の眼内投与による治療歴を有する
- 試験眼に網膜硝子体手術、PRPまたは黄斑レーザー光凝固による治療歴を有する
- いずれかの眼に、虹彩新生血管、硝子体出血、牽引性網膜剝離または黄斑を含む網膜前線維症を有する
- 初回投与日の6ヵ月以内に脳血管障害または心筋梗塞の既往を有する など
試験デザイン
無作為化二重遮蔽比較試験
投与方法
対象患者を、アイリーア群(アイリーア2mg投与)および偽注射群の2群に無作為に割り付けた。
1日~20週目は4週ごとにアイリーア投与または偽注射を行った(固定投与期)。24~48週目は、両群ともに4週ごとに評価を行い、再投与基準に従ってアイリーアを投与した〔Extended dosing期(4週ごと診察)〕。52週目以降は、両群ともに12週ごとに評価を行い、再投与基準に従ってアイリーアを投与し、100週目まで評価した〔Extended dosing期(12週ごと診察)〕。
※1
Extended dosing期(24~100週目)は、偽注射+アイリーア群とする
※2
両群ともに、再投与基準に従ってアイリーアの硝子体内投与を行い、投与しないときには偽注射を行う
※3
両群ともに、再投与基準に従ってアイリーアの硝子体内投与を行い、投与しないときには偽注射も行わない。また、頻回な投与が必要と判断された場合は投与間隔を4週間まで短縮可能
[Extended dosing期の再投与基準]
悪化した場合:
- OCTで中心網膜厚(CRT)がそれまでの最低値よりも50µm超増加
- OCTにより検出される網膜の新規または遷延性の嚢胞性変化あるいは網膜下液、もしくは中心網膜厚(CRT)250µm以上の遷延性びまん性浮腫
- OCTによる中心網膜厚(CRT)増加が認められ、かつ最高矯正視力文字数がそれまでの最高文字数から5文字以上低下
改善した場合:
- 最高矯正視力が前回来院時から5文字以上改善
主な有効性評価項目
主要評価項目:
24週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合
二次評価項目:
24週目における①最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量、②中心網膜厚(CRT)のベースラインからの変化量、③眼内新生血管へと進行した患者の割合、④NEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量
三次評価項目:
52週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合、52週目における最高矯正視力文字数、中心網膜厚(CRT)およびNEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量ならびに眼内新生血管へと進行した患者の割合 など
追加評価項目:
100週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合、100週目における最高矯正視力文字数、中心網膜厚(CRT)およびNEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量ならびに眼内新生血管へと進行した患者の割合 など
主な安全性評価項目
有害事象、副作用、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡、APTC定義による動脈血栓塞栓事象 など
解析計画
検証的な解析(第1種の過誤を考慮し、検出力を考慮し例数設計された解析)
- 主要評価項目(FAS):アイリーア投与群の偽注射群に対する優越性の検証
(主解析:24週までに中止した患者を非改善として解析)
第1種の過誤を考慮した解析(検出力を考慮した例数設計はされていない)
- 二次評価項目(FAS):同上。ただし、検定の多重性を考慮し、主要評価項目で優越性が検証された場合に限り、事前に定めた順序(①から昇順)に従い検定を行う。
探索的な解析
- 三次評価項目(FAS)
追加評価項目(FAS)
併合解析:dry retinaの患者の割合および網膜灌流状態の変化(三次評価項目) など
部分集団解析:ベースラインの網膜灌流状態別の主要評価項目および二次評価項目の解析 など
※欠測値はLOCF法によって補完
FAS(full analysis set):最大の解析対象集団
NEI VFQ-25(National Eye Institute 25-item Visual Function Questionnaire):米国国立眼病研究所の25項目からなる視覚機能についてのアンケート
OCT(optical coherence tomography):光干渉断層計
PRP(panretinal photocoagulation):汎網膜光凝固
VEGF(vascular endothelial growth factor):血管内皮増殖因子
●
偽注射:硝子体内注射と同じ処置を行うが、注射の代わりに針のない注射シリンジを局所麻酔下で眼球に押し付ける方法
●
中心網膜厚(CRT:central retinal thickness):中心サブフィールド(中心窩から直径1mmの範囲)の網膜厚
網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫の用法及び用量
アフリベルセプト(遺伝子組換え)として1回あたり2mg(0.05mL)を硝子体内投与する。投与間隔は、1ヵ月以上あけること。
試験対象例数と各群の患者の内訳
※1
Extended dosing期(24~100週目)は、偽注射+アイリーア群
患者背景および特性(FAS)
COPERNICUS試験において、各投与群のベースライン時の人口統計学的特性は以下の通りでした。
※
10乳頭面積(Disc Area:DA)未満の毛細血管閉塞と定義。なお、虚血型は10DA以上の毛細血管閉塞と定義
投与回数
固定投与期直後のExtended dosing期(24~52週目)のアイリーアの平均投与回数は、偽注射+アイリーア群は3.9回、アイリーア群は2.7回でした。
Extended dosing期におけるアイリーアの平均投与回数(24週完了例)
平均値±標準偏差(例数)
※
100週完了例
視力評価
(1)視力の改善
24週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合は、アイリーア群56.1%、偽注射群12.3%であり、アイリーア群の偽注射群に対する優越性が検証されました。
24、52および100週目に15文字以上の視力改善がみられた患者の割合(FAS)
注:
24週目までに早期中止し、かつアイリーア投与または偽注射の回数が5回未満の患者は非改善とし、それ以外はLOCF法によって補完した
アイリーア群:n=114、偽注射(+アイリーア)群:n=73
※1
地域およびベースライン最高矯正視力で調整した両側CMH検定
※2
地域およびベースライン最高矯正視力を層としたCMH型の重みを用いて調整した
※3
52週および100週は名目上のp値
●
最終評価スコア外挿法(LOCF:Last Observation Carried Forward):欠測値に対して欠測前の最後の測定値を用いて補完する解析方法
(2)視力の変化
24週目の最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量は、アイリーア群+17.3文字、偽注射群-4.0文字であり、アイリーア群の偽注射群に対する優越性が示されました。
最高矯正視力文字数の変化量の推移(LOCF、FAS)
※1
Extended dosing期(24~100週目)は、偽注射+アイリーア群()
※2
投与群、地域およびベースライン最高矯正視力を固定効果としたANOVAモデル
※3
アイリーア群-〔偽注射(+アイリーア)〕群
形態学的評価
(1)中心網膜厚(CRT)の変化
24週目のCRTのベースラインからの変化量は、アイリーア群-457.2μm、偽注射群-144.8μmであり、アイリーア群の偽注射群に対する優越性が示されました。
CRTの変化量の推移(LOCF、FAS)
※1
Extended dosing期(24~100週目)は、偽注射+アイリーア群()
※2
投与群、地域およびベースライン最高矯正視力を固定効果としたANOVAモデル
※3
アイリーア群-〔偽注射(+アイリーア)〕群
(2)【参考情報】眼内新生血管へと進行した患者の割合
24週目までにいずれかの眼内新生血管へと進行した患者の割合は、アイリーア群0%、偽注射群6.8%であり、アイリーア群の偽注射群に対する優越性が示されました。また、52週目までに新たな眼内新生血管の発現はみられませんでしたが、100週目にはアイリーア群5.3%、偽注射+アイリーア群11.0%に認められました。
眼内新生血管へと進行した患者の割合(FAS)
PRP(panretinal photocoagulation):汎網膜光凝固
※1
アイリーア群-〔偽注射(+アイリーア)〕群(地域およびベースライン最高矯正視力を層としたCMH型の重みを用いて調整した)
※2
地域およびベースライン最高矯正視力で調整した両側CMH検定
※3
52週および100週は名目上のp値
※4
PRPによる救済措置は、試験中に眼内新生血管へと進行が認められた時点で実施した
QOLに関する評価
【参考情報】NEI VFQ-25合計スコア
24週目のNEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量は、アイリーア群7.2ポイント、偽注射群0.8ポイントであり、アイリーア群の偽注射群に対する優越性が示されました。
NEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量(LOCF、FAS)
※
投与群、地域およびベースライン最高矯正視力を固定効果としたANOVAモデル
部分集団解析(ベースラインの網膜灌流状態〔非虚血型※/虚血型〕†)
※
10乳頭面積(Disc Area:DA)未満の毛細血管閉塞と定義。なお、虚血型は10DA以上の毛細血管閉塞と定義
†
当初の解析計画では、ベースラインの網膜灌流状態を、非虚血型と虚血型(分類不能を含む)の2群に分けて解析する予定であったが、照会事項での回答に従い、審査報告書には非虚血型、虚血型、分類不能の3群に分類した結果が記載された。
(1)視力の改善
15文字以上の視力改善がみられた患者の割合に関する部分集団解析(LOCF、FAS)
※
アイリーア群-〔偽注射(+アイリーア)〕群(信頼区間は正確な方法を用いた)
(2)視力の変化
最高矯正視力文字数の変化に関する部分集団解析(LOCF、FAS)
※1
平均値±標準偏差
※2
アイリーア群-〔偽注射(+アイリーア)〕群(ベースラインの網膜灌流状態の分類、投与群およびベースラインの網膜灌流状態の分類と投与群の交互作用を固定効果、最高矯正視力文字数のベースライン値を共変量としたANCOVAモデル)
安全性(100週間の有害事象発現率)
COPERNICUS試験では、100週目において、すべての有害事象はアイリーア群で114例中112例(98.2%)、偽注射+アイリーア群で74例中70例(94.6%)に認められました。主な有害事象は、52週目までにアイリーア群で視力低下22例(19.3%)、結膜出血19例(16.7%)、眼痛18例(15.8%)、高血圧17例(14.9%)、眼圧上昇15例(13.2%)、視神経乳頭血管障害・網膜出血が各13例(11.4%)、黄斑浮腫12例(10.5%)、偽注射+アイリーア群で視力低下16例(21.6%)、結膜出血15例(20.3%)、網膜出血・眼圧上昇が各10例(13.5%)、硝子体出血9例(12.2%)など、52~100週目※1にアイリーア群で視力低下21例(19.6%)、黄斑浮腫14例(13.1%)、網膜出血12例(11.2%)、結膜出血11例(10.3%)、偽注射+アイリーア群で眼圧上昇8例(14.0%)、網膜色素上皮症・視力低下・高血圧が各7例(12.3%)などでした。副作用※2は、アイリーアを投与された171例※3中64例(37.4%)に認められました。主な副作用は、結膜出血29例(17.0%)、眼痛17例(9.9%)などでした。試験薬に関連する重篤な有害事象は、アイリーア群で網膜動脈閉塞が1例、偽注射+アイリーア群で白内障・急性心筋梗塞が各1例に認められました。試験薬に関連する投与中止に至った有害事象は、アイリーア群で網膜動脈閉塞が1例に認められました。試験薬に関連する死亡は、偽注射+アイリーア群で急性心筋梗塞が1例に認められました。
※1
52週完了例(アイリーア群107例、偽注射+アイリーア群57例)を評価対象とした
※2
投与手技に起因する有害事象を含む
※3
アイリーア群114例、偽注射+アイリーア群57例
COPERNICUS試験(100週間)
発現例数(発現率%)
a)
0~20週目は偽注射を行い、24週目以降はアイリーア投与または偽注射を行った
b)
すべての有害事象のうち、APTC(Antiplatelet Trialists' Collaboration)定義により判定された動脈血栓塞栓事象