日本人を含む第Ⅲ相国際共同試験:GALILEO試験1,2)
(偽注射に対する優越性の検証)
1)バイエル薬品社内資料[日本人を含む第Ⅲ相国際共同試験:GALILEO試験]承認時評価資料
2)バイエル薬品社内資料[GALILEO試験日本人部分集団解析]承認時評価資料
本ページでは「アイリーア(2mg)」を「アイリーア」と記載しています。
滲出型加齢黄斑変性(AMD)患者を対象とした海外第Ⅱ相試験(CLEAR-IT Ⅱ試験)および国内外で実施された第Ⅲ相試験(VIEW1試験およびVIEW2試験)の結果から、アイリーアの用法及び用量を「2mgを4週ごとに硝子体内投与する」と設定し、アイリーアの偽注射に対する優越性を検証しました。
【実施地域】
アジア太平洋地域(日本含む)、オーストラリアおよび欧州連合の10ヵ国、63施設
試験概要
目的
網膜中心静脈閉塞症(CRVO)に伴う黄斑浮腫を有する患者を対象に、アイリーアの有効性について偽注射に対する優越性を検証するとともに、安全性および忍容性についても検討する
試験対象
CRVOに伴う黄斑浮腫を有する患者:177例(うち日本人:21例)
[主な選択基準]
- CRVO(罹病期間9ヵ月未満)に伴う黄斑浮腫を有する18歳以上の男女
- OCTで中心網膜厚(CRT)が250µm以上
- 試験眼のETDRS視力表による最高矯正視力文字数が73~24文字(スネレン視力で20/40~20/320) など
[主な除外基準]
- 試験眼にVEGF阻害剤または副腎皮質ステロイド剤の眼内投与による治療歴を有する
- 試験眼に網膜硝子体手術、PRPまたは黄斑レーザー光凝固による治療歴を有する
- いずれかの眼に、虹彩新生血管、硝子体出血、牽引性網膜剝離または黄斑を含む網膜前線維症を有する
- 初回投与日の6ヵ月以内に脳血管障害または心筋梗塞の既往を有する
など
試験デザイン
無作為化二重遮蔽比較対照試験
投与方法
対象患者を、アイリーア群(アイリーア2mg投与)および偽注射群の2群に無作為に割り付けた。
1日~20週目は4週ごとにアイリーア投与または偽注射を行った(固定投与期)。24~48週目は、アイリーア群は4週ごとに評価を行い、再投与基準に従ってアイリーアを投与し、偽注射群は4週ごとに偽注射を行った〔Extended dosing期(4週ごと診察)〕。52週目以降は、アイリーア群は8週ごとに評価を行い、再投与基準に従ってアイリーアを投与し、偽注射群では52週目は原則アイリーアを投与し、それ以降は8週ごとに評価を行い、再投与基準に従ってアイリーアを投与し、両群ともに76週目まで評価した〔Extended dosing期(8週ごと診察)〕。
※1
Extended dosing期(52~76週目)は、偽注射+アイリーア群とする
※2
アイリーア群のExtended dosing期(24~68週目)ならびに偽注射群のExtended dosing期(60および68週目)は、再投与基準に従ってアイリーアの硝子体内投与を行い、投与しないときには偽注射を行う
[Extended dosing期の再投与基準]
悪化した場合:
- OCTで中心網膜厚(CRT)がそれまでの最低値よりも50µm超増加
- OCTにより検出される網膜の新規または遷延性の嚢胞性変化あるいは網膜下液、もしくは中心網膜厚(CRT)250µm以上の遷延性びまん性浮腫
- OCTによる中心網膜厚(CRT)増加が認められ、かつ最高矯正視力文字数がそれまでの最高文字数から5文字以上低下
改善した場合:
- 最高矯正視力が前回来院時から5文字以上改善ならびにOCTの中心サブフィールド(中心窩から直径1mmの範囲)に網膜浮腫が存在しない
主な有効性評価項目
主要評価項目:
- 24週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合
二次評価項目:
24週目における①最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量、②中心網膜厚(CRT)のベースラインからの変化量、③眼内新生血管へと進行した患者の割合、④NEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量
三次評価項目:
52週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合、52週目における最高矯正視力文字数、中心網膜厚(CRT)およびNEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量ならびに眼内新生血管へと進行した患者の割合 など
追加評価項目:
76週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合、76週目における最高矯正視力文字数、中心網膜厚(CRT)およびNEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量ならびに眼内新生血管へと進行した患者の割合 など
主な安全性評価項目
有害事象、副作用、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡、APTC定義による動脈血栓塞栓事象 など
解析計画
検証的な解析(第1種の過誤を考慮し、検出力を考慮し例数設計された解析)
- 主要評価項目(FAS):アイリーア投与群の偽注射群に対する優越性の検証
(主解析:24週までに中止した患者を非改善として解析)
第1種の過誤を考慮した解析(検出力を考慮した例数設計はされていない)
- 二次評価項目(FAS):同上。ただし、検定の多重性を考慮し、主要評価項目で優越性が検証された場合に限り、事前に定めた順序(①から昇順)に従い検定を行う。
③において優越性が示されなかったため、検定を終了した。
探索的な解析
主要評価項目の感度解析※(FAS)
三次評価項目(FAS)
追加評価項目(FAS)
併合解析:dry retinaの患者の割合および網膜灌流状態の変化(三次評価項目) など
部分集団解析:
ベースラインの網膜灌流状態別の主要評価項目および二次評価項目の解析
日本人の部分集団解析 など
※欠測値はLOCF法によって補完
FAS(full analysis set):最大の解析対象集団
NEI VFQ-25(National Eye Institute 25-item Visual Function Questionnaire):米国国立眼病研究所の25項目からなる視覚機能についてのアンケート
OCT(optical coherence tomography):光干渉断層計
PRP(panretinal photocoagulation):汎網膜光凝固
VEGF(vascular endothelial growth factor):血管内皮増殖因子
●
偽注射:硝子体内注射と同じ処置を行うが、注射の代わりに針のない注射シリンジを局所麻酔下で眼球に押し付ける方法
●
中心網膜厚(CRT:central retinal thickness):中心サブフィールド(中心窩から直径1mmの範囲)の網膜厚
網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫の用法及び用量
アフリベルセプト(遺伝子組換え)として1回あたり2mg(0.05mL)を硝子体内投与する。投与間隔は、1ヵ月以上あけること。
試験対象例数と各群の患者の内訳
※1
Extended dosing期(52~76週目)は、偽注射+アイリーア群
患者背景および特性(FAS)
GALILEO試験において、各投与群のベースライン時の人口統計学的特性は以下の通りでした。
※
10乳頭面積(Disc Area:DA)未満の毛細血管閉塞と定義。なお、虚血型は10DA以上の毛細血管閉塞と定義
投与回数
固定投与期直後のExtended dosing期(24~52週目)のアイリーア群の平均投与回数は、2.5回でした。
Extended dosing期におけるアイリーアの平均投与回数(24週完了例)
平均値±標準偏差(例数)
※
52週完了例
視力評価
(1)視力の改善
24週目にベースラインから15文字以上の視力改善がみられた患者の割合は、アイリーア群60.2%、偽注射群22.1%であり、アイリーア群の偽注射群に対する優越性が検証されました。
24、52および76週目に15文字以上の視力改善がみられた患者の割合(FAS)
※1
地域およびベースライン最高矯正視力で調整した両側CMH検定
※2
地域およびベースライン最高矯正視力を層としたCMH型の重みを用いて調整した
●
最終評価スコア外挿法(LOCF:Last Observation Carried Forward):欠測値に対して欠測前の最後の測定値を用いて補完する解析方法
(2)視力の変化
24週目の最高矯正視力文字数のベースラインからの変化量は、アイリーア群+18.0文字、偽注射群+3.3文字であり、アイリーア群の偽注射群に対する優越性が示されました。
最高矯正視力文字数の変化量の推移(LOCF、FAS)
※1
Extended dosing期(52~76週目)は、偽注射+アイリーア群()
※2
投与群、地域およびベースライン最高矯正視力を固定効果としたANOVAモデル
※3
アイリーア群-〔偽注射(+アイリーア)〕群
形態学的評価
(1)中心網膜厚(CRT)の変化
24週目のCRTのベースラインからの変化量は、アイリーア群-448.6μm、偽注射群-169.3μmであり、アイリーア群の偽注射群に対する優越性が示されました。
CRTの変化量の推移(LOCF、FAS)
※1
Extended dosing期(52~76週目)は、偽注射+アイリーア群()
※2
投与群、地域およびベースライン最高矯正視力を固定効果、CRTのベースライン値を共変量としたANCOVAモデル
※3
アイリーア群-〔偽注射(+アイリーア)〕群
(2)【参考情報】眼内新生血管へと進行した患者の割合
24週目までにいずれかの眼内新生血管へと進行した患者の割合はアイリーア群2.9%、偽注射群4.4%であり、アイリーア群の偽注射群に対する優越性が示されなかったため、事前に定めた順序に従った検定を終了しました。
眼内新生血管へと進行した患者の割合(FAS)
PRP(panretinal photocoagulation):汎網膜光凝固
※1
アイリーア群-〔偽注射(+アイリーア)〕群(地域およびベースライン最高矯正視力を層としたCMH型の重みを用いて調整した)
※2
地域およびベースライン最高矯正視力で調整した両側CMH検定
※3
52週および76週は名目上のp値
※4
PRPによる救済措置は、試験中に眼内新生血管へと進行が認められた時点で実施した
※5
52週目におけるアイリーア群の1例は前眼部の新生血管およびその他の網膜新生血管へと進行した
※6
76週目における偽注射+アイリーア群の1例は乳頭上新生血管およびその他の網膜新生血管へと進行した
※7
76週目におけるアイリーア群の2例は前眼部の新生血管とその他の網膜新生血管、および乳頭上新生血管とその他の網膜新生血管へと進行した
QOLに関する評価
【参考情報】NEI VFQ-25合計スコア
24週目のNEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量は、アイリーア群7.5ポイント、偽注射群3.5ポイントでした。
NEI VFQ-25合計スコアのベースラインからの変化量(LOCF、FAS)
※
投与群、地域およびベースライン最高矯正視力を固定効果、NEI VFQ-25合計スコアのベースライン値を共変量としたANCOVAモデル
部分集団解析(ベースラインの網膜灌流状態〔非虚血型※/虚血型〕†)
※
10乳頭面積(Disc Area:DA)未満の毛細血管閉塞と定義。なお、虚血型は10DA以上の毛細血管閉塞と定義
†
当初の解析計画では、ベースラインの網膜灌流状態を、非虚血型と虚血型(分類不能を含む)の2群に分けて解析する予定であったが、照会事項での回答に従い、審査報告書には非虚血型、虚血型、分類不能の3群に分類した結果が記載された。
(1)視力の改善
15文字以上の視力改善がみられた患者の割合に関する部分集団解析(LOCF、FAS)
※
アイリーア群-偽注射群(信頼区間は正確な方法を用いた)
(2)視力の変化
最高矯正視力文字数の変化に関する部分集団解析(LOCF、FAS)
※1
平均値±標準偏差
※2
アイリーア群-偽注射群(ベースラインの網膜灌流状態の分類、投与群およびベースラインの網膜灌流状態の分類と投与群の交互作用を固定効果、最高矯正視力文字数のベースライン値を共変量としたANCOVAモデル)
安全性(76週間の有害事象発現率)
GALILEO試験では、76週目において、すべての有害事象はアイリーア群で104例中91例(87.5%)、偽注射+アイリーア群で68例中61例(89.7%)に認められました。主な有害事象は、52週目までにアイリーア群で黄斑浮腫35例(33.7%)、眼圧上昇19例(18.3%)、眼痛・網膜出血・鼻咽頭炎が各15例(14.4%)、結膜出血13例(12.5%)、網膜血管障害12例(11.5%)、黄斑虚血・視力低下・頭痛が各11例(10.6%)、偽注射+アイリーア群で黄斑浮腫16例(23.5%)、鼻咽頭炎15例(22.1%)、網膜出血9例(13.2%)、網膜血管障害・視力低下が各8例(11.8%)、眼刺激・網膜滲出物が各7例(10.3%)など、52~76週目※1にアイリーア群で黄斑浮腫18例(19.8%)などでした。副作用※2は、アイリーアを投与された146例※3中53例(36.3%)に認められました。主な副作用は、結膜出血20例(13.7%)、眼圧上昇15例(10.3%)、眼痛14例(9.6%)、眼刺激8例(5.5%)などでした。
試験薬に関連する重篤な有害事象は、アイリーア群で黄斑浮腫、黄斑虚血が各1例に認められ、偽注射+アイリーア群で腎不全が1例に認められました。試験薬に関連する投与中止に至った有害事象は、アイリーア群で黄斑虚血が1例に認められました。試験薬に関連する死亡は認められませんでした。
※1
52週完了例(アイリーア群91例、偽注射+アイリーア群52例)を評価対象とした
※2
投与手技に起因する有害事象を含む
※3
アイリーア群104例、偽注射+アイリーア群42例
GALILEO試験(76週間)
発現例数(発現率%)
a)
0~48週目は偽注射を行い、52週目以降はアイリーア投与または偽注射を行った
b)
すべての有害事象のうち、APTC(Antiplatelet Trialists' Collaboration)定義により判定された動脈血栓塞栓事象